キャプテンアメリカはここに

ADHDのアメリカ人の旦那と、息子と私の3人家族の日常

7ヶ月の息子と長時間フライトで怒られた話

パパの地元はアメリ東海岸。羽田から乗継便で15-16時間くらいだったかと思うが、
息子が7ヶ月の時に、家族でアメリカへ帰省した。

初めて息子の顔を見せにいった。皆喜んでくれた。パパの親戚、友人たちとも楽しいひとときを過ごし、とても充実した日々を過ごした。

その帰りのフライトが地獄だった。もう二度と幼子を連れて長時間フライトには乗らぬと誓った。

行きの便は夕方発の便だったので、一日遊ばせて疲れさせた。夜にはぐっすり寝てくれた。特に問題もなかった。

ところが、

帰りの便は朝10時頃出発する便だった。息子も朝、目覚めて、元気バリバリのうちに飛行機にのる。今は考えただけでも恐ろしい。

最初の乗継は一時間で着いたので、良かった。
問題は次の13時間のフライトだ。乗る飛行機の到着遅れで、14時半頃に離陸したと思う。

自分達の席につき、とりあえず、荷物をダッシュボードにいれたり、息子の身の回りのオムツだったりミルクだったりを小さなカバンにいれたりして、態勢を整えた。それから、横の人に先にお断りをいれておく。

息子がうるさくしてご迷惑をおかけしたら、すみません。

飛行機に乗るときは必ずする。息子がバタバタ暴れるのは分かっている。それも、そんじょそこらの子たちとは一線を画す騒ぎようなので、母はいつも気が気でない。
少し大きな声で言う。できるだけ広く周りに聞こえていてほしい。

横は日本人の若いカップル。気にしないでくださいと、とても優しそう。息子のこともかわいいとあやしてくれた。後ろは、パパアメリカ人(恐らく)ママ日本人と3人兄弟の国際ファミリー。息子をたてだっこすると、息子の視界は後ろの席の人たちになるので、ちょっかいをだしはじめる。これはいつも。にこにこ笑いかけて、ヘッドレストをバタバタたたいたりする。お兄ちゃんたちが、にこにこ応戦してくれる。
すみませんすみません。ママは必死。

そもそも、長時間フライトの国際線には、バシネットとよばれる乳幼児用の簡易ベッドみたいなものが取り付けられている席が(少しだが)あることが多い。もちろん今回の便にもあったのだが、とても人気で、フライトの2-3ヶ月前から予約しておかないと、取れなかったりする。取れたとしても、もし自分の子より月齢の小さい子がいたらそちらが優先される。

そんなものがあるのよ。とパパには言った。
しかーし。いかんせん、うちのパパである。ADHDの能力を遺憾なく発揮。早々に予約なんてしてくれない。なんなら航空券だって直前になって、券がとれてないかも、どうしよう、なんて言って航空会社に電話していた。
自分でとったら良かったのかもしれないが、ここはパパに任せた。安くチケットをとってくれたのでそこはよし。

後ろの方から、さらに大きな声で、赤ちゃんだから、泣くのが仕事だし、私は気にしないわ。なんて言ってくださる姐さんがいた。ありがたかった。

だが後に、この姐さんに怒られることとなる。

息子と延々と膝の上で遊んでいた。パパは疲れて寝ている。パパは大体飛行機では寝る。何ゆえにじっとしない息子に手を焼いているママを助けてくれないのかと聞いたことがある。

二人でやってもしょうがない。だそうだ。

な ん だ と?

じゃ、パパがやりなさいよ。と思うが、パパは乗り物では何かにつけて言い訳をして寝る。
疲れてる。昨日寝れなかった。

知らんがな。夜は寝ろ言うとるがな。寝らんのはあんたの自由じゃけんども、うちゃ知らんで。手伝え。

そんな感じなのでイライラは募る。
息子もだんだん飽きてくる。
オムツを変えにトイレに行ったり、
ミルクをあげたり、ちょっとしたお菓子をあげたり。
前の席をたたいたり蹴ったりするので、毎回毎回、やめなさいと手でとめると、ギャーギャー騒ぐ。後ろに身を乗り出そうとするので、それもやめさせようとだっこし直すと嫌がって騒ぐ。

息子と母の攻防に、お互い消耗していった。途中一時間ほどパパに託すも、その間もパパはぐでーとして大して相手をしない。息子もつまらないので母に帰ってくる。

もうなにをしても息子がギャーギャーと落ち着かなくなってしまった。母も疲れ果て、はいはい静かにしてと言うことしかできなくなってしまった。パパは隣で寝ている。なんで私ばかり、との思いもいつもどこかにある。
夜の10時頃だったかと思う。先程の姐さんが

ちょっとねぇ、

と大きな声で私に向けて言った。語調が荒い。

何事かと思い振り向くと。

うるさい、と。こっちだって疲れてるんだから、と。

ごもっともです。なにも言うことはありません。
(いやまて、あんたさっき気にしない言うてたやないかい。とは思った。)

すみませんと謝って、席をたった。パパが、赤ちゃんなんだから、しょうがない、気にすんなみたいなことをいっている。
アメリカ人と日本人の差だ。彼らは子供がうるさくてもたいして気にしない。

それから三時間半。息子を抱っこひもにいれて、
トイレの前の通路で、ユラユラ。それでも息子は寝てくれなかった。抱っこひものなかでも抜け出そうと必死。

トイレの前なので、度々人が前を通る。3人ほど私に声をかけてきてくれた。頑張ってねと。息子を抱っこしてくれた人もいた。かわいいね、でも大変よねって。

和んだ。

着陸30分前には、揺れるので着席を求められ、席に戻った。しばらくしたら、息子が寝た。

今なの?何ゆえに今さら寝るの?

もうくたくただった。

着陸してから、また周りに、うるさくてすみませんでしたと謝った。

カップルは終始優しかった。後ろのファミリーのママも頑張ったねと声をかけてくれた。3人もお子さんがいるので、きっといろいろ大変だったに違いない。

やっと終わった。

電車に乗ると、また声をかけられた。一緒に飛行機に乗っていた人らしかった。お母さん偉かったね、頑張ったね、と。

いろんな人が見ていてくれた。声をかけてもらえると本当に励みになる。

パパはほぼ知らん顔だったけど。

パパがそんなんなので、もう絶対に長時間フライトには乗らないと誓った。アメリカには息子がもう少し大人しく座っていられるまで帰らない。とパパに伝えた。パパも了承してくれた。

もちろん、ひとさまに迷惑を掛けるのは全くもってよろしくない。日本についたのは、12時間もどって、また午後の3時ころだったかと思うが、これから予定のある人だって、いるだろう。あの姐さんだって、静かに寝たいのにうるさくして本当に申し訳なかった。不満でも、声にして文句を言う人は全体の1割にも満たないとか言われる中で、声にしてくれて。きっと周りにも迷惑に思っていた人はたくさんいただろう。

こっちだって、静かに座って大人しくしていてくれればそれが一番だ。でも息子はそれができない。
じっとすわって10時間以上も静かにしておくことなんて無理。立ってあやしたって、泣くときはなく。どこにいたってうるさい。当時息子は8kg。抱っこひもにいれていたって、重たいもんは重たい。しんどい。私だって寝たい。でも寝てくれない。このストレスは大きい。加えてパパも知らんぷり。周りからの視線。ストレスはマックスだ。

しんどかった経験も、後になればあんなことあったな、ってなる。最近はまたアメリカに帰ってもいいかななんて思っている。でも思い返すとよくあんなことできたな。今は息子も2歳で、さらに暴れん坊になったので、やっぱりまだまだ先かな。
パパも協力的ならいいんだけど、こんなんだから、絶対に無理だなあ。せめて、一緒になって、大変だね、頑張ろうねーみたいな感じなら違うんだけどなぁ。アメリカ人だし、男だし。やっぱり日本人女とは感じ方が違うんだろう。


こんな話でした。